店長の十川です
書道における滲み(にじみ、ニジミ)とはどういう事か考えてみました。
書道における滲みとはどういう事か考えてみました。
大辞林 第三版の解説
にじむ【滲む】
①
液体がしみて広がる。 「インクが-・む」
②
輪郭がぼやける。 「涙でネオンが-・む」
③
液体が表面にしみ出てくる。また,表情などにあらわれる。 「血が-・む」 「苦悩の色が-・む」
④
(多く「にじませる」の形で)それとなく現れる。 「解散の可能性を-・ませた発言
とあるように、滲みとは書道半紙の上で墨汁が吸い取られてしみて広がること、そして輪郭がぼやけること、となります。
紙は繊維と繊維を重ね合わせて作った薄い膜です。
繊維と繊維の間にはたくさんの隙間があります。隙間はごく小さいものでその細い穴を毛細管といいます。
紙に墨を落とすと、この毛細管の中に浸透していきます。これを毛細管現象といいます。
毛細管現象を起こす際には墨が濃いほど浸透が悪く、墨が薄いほど(薄いということは墨の部分と水の部分の比率が水のほうが大きい)浸透が良いということになります。
その理由で淡墨で書いた作品はよくにじむことになります。
書道用半紙には滲むものと滲まないものがあります。
漢字用半紙の選び方は全くの好みですが、買っていただくお客様の傾向により小学生に教える際滲まない方が教えやすいと主に関西では滲まない半紙を、関東では滲む半紙をと住分けられているように思います。
大人の方がお使いになる手漉き半紙にはにじみ止めは施されていないのでよく滲みますが、
上級者になるほどに書道はこの滲みがあるからこそ書き方に工夫がなされたりおもしろみが出るものといっていいと思います。
印刷用紙やコピー用紙といった一般に言う洋紙では、墨を使って書いてもこの滲みがないため味気ないものになります。
書道には書道半紙を使う意味がここにあります。
以下に当店で取り扱っている用紙に極薄くすった墨を1滴落とし
にじみ具合を比べてみました。
紅星牌のにじみ具合です。
さすがによく滲みが出ます。紅星牌は藁の細かい繊維を多く使っているので毛細管現象が起こりやすく、真ん中の墨の部分まで横に広がろうとしています。
手漉き半紙久生です。
紅星牌ほどではありませんが、にじみ止めをしていないので滲みます。
機械抄き半紙野菊です。
滲みが少ないことで学生用の半紙として人気です。
かな用手漉き半紙水仙です。
滲み止めが効いていて広がりが少ないです。
仮名の紙にはにじみ止めを施した『加工紙』が使われます。
加工紙の作り方には3種類の方法があります。
①ドーサ引きをするもの
繊維の表面に付着して滲みを防ぐ役割をする
②填料を使う
填料は粒子が細かいので繊維の隙間に入り隙間を埋めることと填料には吸水性があるので墨を閉じ込めて広がらせないことから滲みを止めることが出来ます。
③キャレンダーを使う
紙を圧着させて繊維を絡ませ密度を上げて隙間をなくすことで浸透を妨げる効果を持たせるものがあります。
以上、製造者の立場から考えた書道半紙の滲みの話でした。
- 2022.08.21
- 15:24
- 店長の十川です